同一労働同一賃金(4)どうすれば適法になるのか?〈a〉ガイドライン概要
2019年10月11日(金)
前回、同一労働同一賃金(3)不合理な待遇差の禁止、差別的取扱の禁止では、どのようなことが「待遇差」となるのかについて書きました。
もし現在、正社員・契約社員・パート社員などの雇用区分によって「差別的取扱」や「不合理な待遇差」が既にあるとしたら、その違法状態を適法状態に変えていかなければなりません。
■同一労働同一賃金ガイドライン
では実際、何をどう変えていけばよいのでしょうか。
その内容を具体的に示しているのが、
『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針』
…長い。なので略して「同一労働同一賃金ガイドライン」と呼ばれています。
このガイドライン(指針)は、「不合理な待遇差」が存在する場合に、どのようなものが不合理なのか、不合理ではないのか、原則となる考え方や具体例を示しています。
例えば、基本給、昇給、賞与、役職手当・通勤手当・家族手当などの各種手当はもちろん、教育訓練や福利厚生等についても記載されています。
裏を返せば、同一労働同一 ”賃金” と言いつつ、待遇差が禁止されるのは ”賃金” だけでなく、教育訓練や福利厚生にも及ぶ、ということです。
「同一労働同一賃金って、同じ仕事なら給料を同じにしなさい、っていうことじゃないの?」
というつぶやきが聞こえてきそうですが、賃金はもちろん、賃金以外でも対応が求められています。
次回以降、例えば「基本給」「賞与」など、個別の項目ごとの対応についてお知らせしていきます。
(ただし、待遇差が不合理か否か争われた場合、最終的には司法(裁判)で個別ケースごとに判断されることになります。)
■対応のための参考資料
さらに踏み込んだ点検・検討マニュアルも厚生労働省から公表されています。
とはいえ、これを読み解き、理解して対応するには、一定の労力と時間が必要です。
賃金のしくみを一気に変えることは難しいかもしれません。
それでも、もし違法状態が疑われるのであれば、自社なりのゴール(適法状態)・それまでの期間・移行スケジュールを定めることがポイントです。
今の状態になるまでには、会社の歴史・経緯・事情があることと思います。
今後はそれに加えて、単純に法律改正に合わせてしくみを変えるだけでなく、事業主さまの描く『会社の未来図』をしくみに加えていくことが重要です。
そのためには、まず自社の状態を把握し、変えなければならないことをあぶりだすことが必要になります。
働き方改革、同一労働同一賃金等にともなう法改正対応をお考えの方は、ぜひあおい社会保険労務士法人へお問合せください。
=全16回=
同一労働同一賃金(2)対象となる労働者とは ~パート有期労働法~
同一労働同一賃金(3)不合理な待遇差の禁止、差別的取扱の禁止
同一労働同一賃金(4)どうすれば適法になるのか?〈a〉ガイドライン概要
同一労働同一賃金(5)どうすれば適法になるのか?〈b〉基本給・賞与
同一労働同一賃金(6)どうすれば適法になるのか?〈c〉役職手当・精勤手当
同一労働同一賃金(7)どうすれば適法になるのか?〈d〉通勤手当・時間外手当
同一労働同一賃金(8)どうすれば適法になるのか?〈e〉福利厚生など
同一労働同一賃金(10)対象となる労働者とは ~労働者派遣法~
同一労働同一賃金(11)どうすれば適法になるのか?〈a〉派遣先均等・均衡方式
同一労働同一賃金(12)どうすれば適法になるのか?〈b〉労使協定方式
社会保険労務士 金久保眞理