同一労働同一賃金(7)どうすれば適法になるのか?〈d〉通勤手当・時間外手当
2019年10月23日(水)
各手当について、何が「同一」でなければならないのか、どのようなケースでは例外が認められるのかを確認していきましょう。
■通勤手当
『短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない。』
パート労働者だからといって、電車の運賃が正社員より割引になることは、一般的にはありませんよね。
したがって、通勤手当は、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者とは同一でなければなりませんが、以下のような例は問題ないとされています。
(問題とならない例)
【イ】 A社においては、本社の採用である労働者に対しては、交通費実費 の全額に相当する通勤手当を支給しているが、それぞれの店舗の採用 である労働者に対しては、当該店舗の近隣から通うことができる交通費に相当する額に通勤手当の上限を設定して当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給しているところ、店舗採用の短時間労働者であるXが、その後、本人の都合で通勤手当の上限の額では通うことができな いところへ転居してなお通い続けている場合には、当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給している。
→本社採用と店舗採用とで、採用エリアが異なるために、エリアに合わせた『交通費の上限』が元々設定されていたケースです。店舗採用の従業員が、本人都合でエリア外に引っ越したために交通費が上がって、上限を超えてしまったとしても、それは元の上限の範囲内しか支給しなくてもよいですよ、という例外です。
【ロ】 A社においては、通勤手当について、所定労働日数が多い(例えば、 週4日以上)通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者には、月額の定期券の金額に相当する額を支給しているが、所定労働日数が少ない (例えば、週3日以下)又は出勤日数が変動する短時間・有期雇用労働者には、日額の交通費に相当する額を支給している。
→労働者の所定労働日数によって、定期券支給であったり、日額の実費支給だったり、というケースです。必要な交通費の支払方法の違いであって、この違いは問題ないとされています。
■時間外手当
『通常の労働者の所定労働時間を超えて、通常の労働者と同一の時間外労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者の所定労働時間を超えた時間につき、通常の労働者と同一の割増率等で、時間外労働に対して支給される手当を支給しなければならない。』
→時間外労働の割増率等は、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者とは同一でなければなりません。
■深夜労働または休日労働手当
『通常の労働者と同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の割増率等で、深夜労働又は休日労働に対して支給される手当を支給しなければならない。 』
→上記の時間外労働と同じく、割増率等は短時間・有期雇用労働者と通常の労働者とは同一でなければなりません。
以下のような例にも注意しましょう。
(問題となる例)
A社においては、通常の労働者であるXと時間数及び職務の内容が同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間労働者であるYに、深夜労働又は休日労働以外の労働時間が短いことから、深夜労働又は休日労働に対して支給される手当の単価を通常の労働者より低く設定している。
ガイドラインは公表されていますが、実際に待遇差が不合理か否か争われた場合、最終的には司法(裁判)で個別ケースごとに判断されることになります。
働き方改革、同一労働同一賃金等にともなう法改正対応をお考えの方は、ぜひあおい社会保険労務士法人へお問合せください。
=全16回=
同一労働同一賃金(2)対象となる労働者とは ~パート有期労働法~
同一労働同一賃金(3)不合理な待遇差の禁止、差別的取扱の禁止
同一労働同一賃金(4)どうすれば適法になるのか?〈a〉ガイドライン概要
同一労働同一賃金(5)どうすれば適法になるのか?〈b〉基本給・賞与
同一労働同一賃金(6)どうすれば適法になるのか?〈c〉役職手当・精勤手当
同一労働同一賃金(7)どうすれば適法になるのか?〈d〉通勤手当・時間外手当
同一労働同一賃金(8)どうすれば適法になるのか?〈e〉福利厚生など
同一労働同一賃金(10)対象となる労働者とは ~労働者派遣法~
同一労働同一賃金(11)どうすれば適法になるのか?〈a〉派遣先均等・均衡方式
同一労働同一賃金(12)どうすれば適法になるのか?〈b〉労使協定方式
社会保険労務士 金久保眞理