同一労働同一賃金(5)どうすれば適法になるのか?〈b〉基本給・賞与
2019年10月16日(水)
今回からは、各手当等において具体的にどのような取扱が不合理となるのか、同一労働同一賃金ガイドラインの内容を確認してみましょう。
■基本給
(1)労働者の能力又は経験に応じて支給
(2)労働者の業績又は成果に応じて支給
(3)労働者の勤続年数に応じて支給
基本給であって、上記(1)~(3)に当てはまるものがある場合、それぞれに応じた部分において、正社員と非正規社員を比較して、同一であれば同一の、一定の相違がある場合には、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
【具体例~(1)のケース】
・定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある正社員が、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容及び勤務地に変更のない短時間勤務の労働者に助言を受けながら同じ業務をする場合、正社員の基本給を高く設定していても問題とならない。
・正社員Xが非正規社員Yよりも多くの経験を有することを理由として、Xの基本給を高く設定しているが、Xのこれまでの経験は現在の業務に関連性を持たない場合は、問題となる。
【具体例~(2)のケース】
・正社員Xと非正規社員Yは同じ仕事をしてるが、Xは生産効率等の目標値に責任があり、目標達成できない場合は不利益を課されており、一方Yには目標値に対する責任がない場合、Xの賃金をYよりも高く設定することは問題とはならない。
【具体例~(3)のケース】
・労働者の勤続年数において基本給を支給している場合、有期雇用Yに対し、労働契約の開始時からではなく、現時点での労働契約の期間のみにより勤続年数を評価して支給している場合は、問題となる。
また、昇給について、労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについても、その部分については正社員と同一の昇給を行なうこと(勤続による能力の向上に一定の相違がある場合は、その相違に応じた昇給を行なうこと)とされています。
さらに、正社員と非正規社員との間に賃金の決定基準・ルールの相違がある場合、「通常の労働者(正社員)と短時間・有期雇用労働者(非正規社員)との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」等の、主観的又は抽象的な説明だけでは足りない、とされています。
つまり、例えば「正社員には店舗の売り上げに責任があるが、パートには責任がない」といった、違いを設ける具体的な理由を挙げていく必要があります。
■賞与
会社の業績等への貢献度に応じて支給するものについては、正社員と非正規社員の貢献が同じである場合、貢献に応じた部分については、同一の支給をしなければならない。一定の相違がある場合には、その相違に応じて支給しなければならない。
【具体例】
会社業績への貢献等を考慮して賞与支給を行なうと謳っている会社において、正社員には全員なんらかの支給をしているが、非正規社員には全く支給していない場合は、問題となる。
基本給、賞与の項目だけ見ても、業務の内容や責任の重さ、評価の基準等をはっきりさせ、違いを設ける理由を明確にする必要があることが読み取れます。
次回以降、その他の手当についても見ていきましょう。
働き方改革、同一労働同一賃金等にともなう法改正対応をお考えの方は、ぜひあおい社会保険労務士法人へお問合せください。
=全16回=
同一労働同一賃金(2)対象となる労働者とは ~パート有期労働法~
同一労働同一賃金(3)不合理な待遇差の禁止、差別的取扱の禁止
同一労働同一賃金(4)どうすれば適法になるのか?〈a〉ガイドライン概要
同一労働同一賃金(5)どうすれば適法になるのか?〈b〉基本給・賞与
同一労働同一賃金(6)どうすれば適法になるのか?〈c〉役職手当・精勤手当
同一労働同一賃金(7)どうすれば適法になるのか?〈d〉通勤手当・時間外手当
同一労働同一賃金(8)どうすれば適法になるのか?〈e〉福利厚生など
同一労働同一賃金(10)対象となる労働者とは ~労働者派遣法~
同一労働同一賃金(11)どうすれば適法になるのか?〈a〉派遣先均等・均衡方式
同一労働同一賃金(12)どうすれば適法になるのか?〈b〉労使協定方式
社会保険労務士 板垣ゆりか