働き方改革(15)36協定の新書式 特別条項と上限規制
2018年12月05日(水)
2019年4月1日(中小企業では2020年4月1日)より、時間外労働(いわゆる残業)の時間数の上限について、規制が強化されます。
36協定と特別条項
労働時間を延長したり休日労働をすることは、労働基準法36条に定められている協定(いわゆる『36協定』)を定め、それを労働基準監督署に届け出ることにより適法となります。
これまでは、この36協定の中の「特別条項(簡単にいうと、特別な事情があれば残業させることができる)」というものにより、残業時間数は事実上青天井状態でした。
しかし今回の改正によりその時間数に上限が定められ、また特別条項を付ける場合にも、内容が厳しく確認されます。
法改正
原則:時間外労働の上限について、月45時間、年360時間
例外:臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定。なお、原則である月45時間を超えられるのは、年間6カ月まで。
特別条項については、以前は例えば「経理部の決算時期」や「小売店の年末年始」などの繁忙を理由とすることができましたが、改正後はできません。なぜなら、経理部の決算や小売店の年末年始の繁忙は例年のこと=予測可能、つまり「臨時的な特別な事情」ではないからです。(ならば何が「臨時的な特別な事情」に当たるかというと、例えばサーバーが攻撃を受けたとか、そのくらい想定外の出来事が該当するようです。)
年間を通した計画と、適正な労働時間配分が求められます。年度末になって、「もう今年は6カ月以上オーバーしてるから、月45時間を超えられない!」となる可能性は大いにあります。
これから何をすべきか
では、法改正までに何をすればよいのでしょうか。自社の36協定の内容確認、実際の労働状況の確認、業務と労働時間の年間計画などから考える必要があるでしょう。
業務の流れなど、全体を考えるには時間がかかりそうです。一部業種(自動車運転の業務、建設事業、医師など)には適用の猶予期間がありますが、それも5年後までです。新技術や新商品の研究開発業務も適用除外となりますが、一定の条件があります。
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社会保険労務士 金久保眞理