「技能実習」から「育成就労」へ 変わる外国人雇用
2024年07月10日(水)
2024年6月14日、国会において「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」が可決・成立しました。
これにより、現行の技能実習制度に代わり、「育成就労制度」が創設されます。
技能実習制度は、その目的を「技能実習生として受け入れた外国人に技能を教え、育成することにより、母国への技能移転へつながるという国際貢献」としていました。
ただ、実態としては労働力として活用したい企業が多く、制度の目的と現実が大きく違っていることが指摘されていました。
育成就労制度は、「(特定技能1号水準の技能を有する)人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保する」ことを目的としています。
つまり、「人材の確保」のための制度であることを、正面から認めるかたちとなっています。
育成就労制度の特徴としては、次の3点が挙げられます。
(1)日本語能力の向上方策
(2)受け入れ対象職種・分野を、特定技能1号での受け入れ分野(特定産業分野)と原則一致
(3)転籍
(1)については、一定機会ごとに日本語能力の試験等設けることで、日本語教育の充実を図り、外国人が地域に根付き、共生できることを目指しています。
(2)については、そもそも技能実習制度の目的に沿って、習得させた技能は母国で活用するものであり、日本では習得させた技能を役立てる前提となっておらず、技能実習から特定技能移行時に対象職種・分野が一致しないところがありました。
育成就労制度は、「特定技能1号水準の人材を育成」することを目的としているため、受け入れ対象分野と特定産業分野は原則一致となります。
(3)については、技能実習制度下では、実習中であるという前提から「転籍は原則不可」とされており、「やむを得ない事情がある場合」は可能でしたが、どういう事情がやむを得ないのかという基準が不明確でした。
育成就労制度では、労働者としての権利性向上のため、
・「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化、手続きを柔軟化
・一定要件下で、同一業務区分内での本人以降による転籍を認める
としています。
改正法は2027年6月までに施行される見通しです。
前述のとおり、技能実習制度では目的と現実の乖離が指摘されており、育成就労制度の創設はその解消も目的の一つではありますが、切実な問題として、日本の労働力不足がかなり深刻である、という現状があります。
優秀な外国人の方に魅力のある国として選ばれ、日本の経済社会を支えてもらえるための制度となるよう、期待したいですね。
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社会保険労務士 板垣ゆりか