正社員と非正規労働者との格差是正を求める最高裁判決
2018年06月22日(金)
2018年6月1日、二つの訴訟の上告審で、最高裁判所から判決が言い渡されました。
正社員と非正規労働者との格差是正を求める裁判は各地で起きていますが、最高裁からの判決は初めてです。
- 『同じ仕事をしているのに』
ひとつは、物流会社「ハマキョウレックス」で非正規労働者として働くトラック運転手が、「同じ仕事をしているのに、正社員と比べて、待遇に格差があるのは不当」として、正社員に支給される手当などの支払を求めていたもの。
もうひとつは、運送会社「長沢運輸」を定年後に再雇用されたトラック運転手が、「同じ仕事をしているのに、定年退職前に比べて定年退職後の再雇用で賃金が下がったのは不当」として、会社に是正を求めた訴訟です。
- 『今回の判決』
労働契約法第20条に照らした判断が行われ、長澤運輸に関する判決では、手当については個別判断が必要とされたものの、「定年後の再雇用による待遇格差は一般的であり、社会的にも容認」という旨の判断が示されたことは、大きな出来事でした。
一方で、ハマキョウレックスに関する判決では、非正規労働者への手当の一部について、不支給なのは不合理=支給すべき、と支払いが命じられました。
- 『判決が将来に与える影響』
雇用条件によって、正社員と非正規労働者との間に賃金などの労働条件の格差=違いは多くの企業で存在します。
その違いが不合理であるか、是正しなければいけないかどうかの判決は、今後の非正規労働者の労働条件・雇用に大きな影響を及ぼすでしょう。ひいては賃金体系、人事慣行、企業経営にも大きく影響すると予想される、とても重要な判決です。
例えば手当の種類や出し方、非正規労働者の基本給の設定など、給与体系も対応が必要となる可能性があります。
正社員と正社員以外の労働者との待遇の格差については、今回を含めて今後の判例によってどのように方向づけられていくのか、引き続き注目していく必要があります。
過去のブログ
【2017年1月12日】同一労働同一賃金ガイドライン案
【2017年1月6日】変化をどう捉えるか
【2016年12月29日】同一労働同一賃金 特集ページ
【2016年10月3日】有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック
【2016年7月21日】働き方改革
【参考1】ILO(国際労働期間)『同一価値労働 同一報酬のためのガイドブック』より
同一労働同一報酬の意味するところは、同じような能力を有する男女が、同等の条件で、同一あるいはほぼ同一の仕事を行う場合には、同一の報酬の支払いを受けるということである。
【参考2】首相官邸HP 働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/pdf/honbun_h290328.pdf
同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。
【参考3】労働契約法第20条
正社員と有期契約労働者の労働条件とに相違がある場合について、
『有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。』
と規定しています。
社会保険労務士 金久保眞理
労基署対策特設ページ
https://www.roumu-shi.com/service/rouki/