配偶者手当の在り方に関する検討
2016年05月11日(水)
厚生労働省では、「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」の報告書を取りまとめ、公表しました。
この検討会は、労使において配偶者手当の在り方の検討を行うための背景、課題等を整理するとともに、見直しを行う場合の留意事項等について検討するものです。
報告書のポイントは次の通りです。
1 配偶者手当の在り方
配偶者手当は、家事・育児に専念する妻と仕事に専念する夫といった夫婦間の性別役割分業が一般的であった高度経済成長期に日本的雇用慣行と相まって定着してきた制度であるが、女性の就業が進むなど社会の実情が大きく変化している中、税制・社会保障制度とともに、就業調整の要因となっている。
今後労働力人口が減少していくことが予想され、働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できる社会の形成が必要となっている中、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれる。
2 労使による企業の実情を踏まえた検討
労使においては、「経済の好循環の継続に向けた政労使の取組(平成26年12月16日合意)」に基づき、個々の企業の実情(共働き、単身者の増加や生涯未婚率の上昇等企業内の従業員構成の変化や企業を取り巻く環境の変化等)も踏まえて、真摯な話合いを進めることが期待される。
3 配偶者手当の見直しに当たっての留意点
配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要がある。
(1)ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組
(2)労使の丁寧な話合い・合意
(3)賃金原資総額の維持
(4)必要な経過措置
(5)決定後の新制度についての丁寧な説明
税制、社会保障制度とともに、配偶者手当はいわゆる「103万円、130万円の壁」の原因となっているものの一つと考えられています。
具体的に言うと、配偶者手当の支給要件が「配偶者の収入が103万円(もしくは130万円)未満であること」となっているケースがあり、その要件に該当するよう、もっと働けるのにも関わらず配偶者が就労時間を抑えてしまっているのではないか、と考えられているということです。
そもそも、配偶者手当は専業主婦世帯をモデルとして導入されたものと考えられますが、共働き世帯が専業主婦世帯数を上回っている現在、この手当の存在意義が薄れてきているように感じられます。
一方、配偶者手当は収入の一つとして、従業員の生活を支える一部となっていることも確かかと思います。「もう時代に合わないから支給はやめてしまおう」ということでは、不利益変更になりかねません。配偶者手当の見直しを検討する場合には、従業員の納得性というところにも気を配らなければならないでしょう。
見直しは今のところ義務ではありませんが、一億総活躍社会を目指す今、こういう変化が押し寄せてきているということも把握しておきたいところです。
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社会保険労務士 板垣ゆりか
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