同一労働同一賃金(1)「働き方改革」と「同一労働同一賃金」
2019年10月01日(火)
働き方改革の関連法が次々と施行されていくなか、同一労働同一賃金に関する法律の施行日も、2020年4月1日に迫ってきています(中小企業における「パート有期労働法」については2021年4月1日)。
■働き方改革が待ったなしの”本当の理由”
そもそも、どうして政府はこんなに働き方改革を推し進めているのでしょうか。理由はシンプル、『労働者の働き方を変えなければ、日本経済そのものが成り立たなくなるから』です。
日本では、世界でも類を見ない急激な少子高齢化が進み、労働力人口も減少の一途。既にその影響が出始めています。人手不足、営業時間の短縮、サービスの低下、事業の縮小・廃止、人件費の高騰、長時間労働→生産性の低下、健康被害の発生などです。
すべてがからんだ負のスパイラルとなって日本経済を低下させていく前に、業務の効率化、労働時間や無駄な残業の減少、生産性の向上、多様な人材の登用、高度な能力や技術の活用、国際化に対応するなどしていく必要があります。そのための方法を総称したものが、待ったなしの『働き方改革』です。
外国人労働者や技能実習生の増加、24時間営業店舗の営業時間の短縮、銀行窓口やATMの合理化など、様々な対応がニュースでも多く取り上げられるようになった気がしませんか。
■「同一労働同一賃金」が重要である”本当の理由”
賃金は「人」ではなく「仕事」につくため、同じ仕事であれば同じ賃金を得られるようになること。
賃金に違いがあったとしても、不合理ではないこと。
先ほど、「世界でも類を見ない急激な少子高齢化が進み、労働力人口も減少の一途」と述べました。
この人手不足を補うためには、多様な人材の受け入れ、女性やシニアの活躍を促進することや、労働生産性の引き上げ、低生産性産業から高生産性産業への人材移動などが「不可欠」なことは皆わかっています。
でも、同じ仕事でも雇用形態によっては同じ賃金となりにくい従来の日本型雇用システムは、その「不可欠」に対応できません。対応できるようにするための方策のひとつが『同一労働同一賃金』です。
つまり、これを実現することで、ひいては少子高齢化・労働力減少社会に対応していくことになります。
ただし、従来より働き方の選択肢が増えたり人材移動が活性化することは、今まで学校任せ、会社任せにしてきたキャリア形成や能力開発を、今度は労働者ひとりひとりが主体的に行う必要があります。
現在、学校教育や大学受験システムが「自分で考え、判断し、協働していける人材育成」に方向転換しようとしているのは、そのためです。そして、採用する側にもその現状を受け入れ、対応する能力が求められています。
■「同一労働同一賃金」を知る
「同一労働同一賃金」と言われても、具体的に何のことを言っているのかわからない、どうすればよいのかわからない、と感じている方も多いかもしれません。しかし、「知らなかった」「聞いたことがなかった」と、何もしないまま施行日を迎えてしまえば、違法状態を放置してしまうおそれがあります。
今シリーズでは、「同一労働同一賃金」の基本的な内容を、ひとつひとつご説明していきます。
働き方改革、同一労働同一賃金等にともなう法改正対応をお考えの方は、ぜひあおい社会保険労務士法人へお問合せください。
=全16回=
同一労働同一賃金(2)対象となる労働者とは ~パート有期労働法~
同一労働同一賃金(3)不合理な待遇差の禁止、差別的取扱の禁止
同一労働同一賃金(4)どうすれば適法になるのか?〈a〉ガイドライン概要
同一労働同一賃金(5)どうすれば適法になるのか?〈b〉基本給・賞与
同一労働同一賃金(6)どうすれば適法になるのか?〈c〉役職手当・精勤手当
同一労働同一賃金(7)どうすれば適法になるのか?〈d〉通勤手当・時間外手当
同一労働同一賃金(8)どうすれば適法になるのか?〈e〉福利厚生など
同一労働同一賃金(10)対象となる労働者とは ~労働者派遣法~
同一労働同一賃金(11)どうすれば適法になるのか?〈a〉派遣先均等・均衡方式
同一労働同一賃金(12)どうすれば適法になるのか?〈b〉労使協定方式
同一労働同一賃金(15)『説明を求められたとき』の説明義務等
社会保険労務士 金久保眞理