■働き方改革が待ったなしの”本当の理由”
どうして政府はこんなに働き方改革を推し進めているのでしょうか。理由はシンプル、『労働者の働き方を変えなければ、日本経済そのものが成り立たなくなるから』です。
日本では、世界でも類を見ない急激な少子高齢化が進み、労働力人口も減少の一途。既にその影響が出始めています。人手不足、営業時間の短縮、サービスの低下、事業の縮小・廃止、人件費の高騰、長時間労働→生産性の低下、健康被害の発生などです。
すべてがからんだ負のスパイラルとなって日本経済を低下させていく前に、業務の効率化、労働時間や無駄な残業の減少、生産性の向上、多様な人材の登用、高度な能力や技術の活用、国際化に対応するなどしていく必要があります。そのための方法を総称したものが、待ったなしの『働き方改革』です。
■今回の法改正の基本的な考え方
この「働き方改革」の流れの中で、今回改正された労働者派遣法。「派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と、派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消すること等を目指す」とあります。
派遣労働者という雇用形態にかかわらず、不合理な待遇差を解消することで、将来のキャリアパスを描くことができ、安定した生活が見込めるようになること、を目指しています。
■「就業場所は派遣先」なので
派遣労働者の就業場所は派遣先ですから、派遣先次第で待遇は違いますね。
でも待遇が違うと、派遣労働者は納得できないことがあるかもしれません。
同一労働同一賃金の実現にあたり、派遣先の労働者との 均等(=差別的な取扱いをしないこと)、均衡(=不合理な待遇差を禁止すること)は重要な観点です 。
しかし、この場合、いくつかの問題があります。
派遣先が変わるごとに賃金水準が変わる
=派遣労働者の所得が不安定になりやすい
=派遣先企業の規模の大小で賃金水準が変わり、職務の難易度と整合しない
=結果として、派遣労働者個人の段階的・体系的なキャリアアップ支援と不整合な事態 を招くことがありうる
こうした状況を踏まえ 、改善するため、今回の改正が行われました。
派遣労働者の待遇について、派遣元事業主には、以下のいずれかを確保することが義務化されます。
【派遣先均等・均衡方式 】 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇
【労使協定方式 】 一定の要件を満たす労使協定による待遇
改正・労働者派遣法は、2020年4月1日に施行されます。
■企業規模にかかわらず
働き方改革関連法の中には、時間外労働の上限規制やパートタイム・有期雇用労働法の同一賃金同一労働など、企業規模によって施行期日が異なるものもあります。
しかし、労働者派遣法は企業規模にかかわらず2020年4月1日から改正されることに注意が必要です。
なぜ同時に施行されるのでしょうか?
労働者派遣が行われている事業者の企業規模は様々です。
企業規模によって施行期日を変えてしまうと、派遣元と派遣先とで法改正の日が異なります。
同時施行にしないと、1人の待遇の中で違法と適法が共存という事態になってしまいますね。
■派遣期間が残っていても
改正労働者派遣法は、2020年4月1日の時点で派遣契約の期間が残っていたとしても、4月1日から改正法が適用されることに注意が必要です。これが、同じ働き方改革関連法対応でも、新しい36協定とは大きく違うところです。(36協定の場合、2020年3月31日までに締結されたものについては、2020年4月1日以降も有効期間満了までは有効となります)
また、4月1日時点で労使協定締結できていなかった場合は、強制的に派遣先均等均衡方式が適用されますが、その場合は派遣元・派遣先とも作業量等が大きく変わってきます。
「働き方改革」とひとくくりに考えず、ひとつひとつ、自社としてどうするかの確認と判断をすることがポイントですね。
改正されるパートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法、両方が適用となる労働者もいることに注意が必要です。
■対象となる派遣労働者
労働者派遣法の対象は、すべての派遣労働者です。
つまり、労働者派遣を行なっている会社はもちろん、派遣労働者を受け入れているすべての会社にもかかわる法改正、ということになります。
■短時間労働者又は有期雇用労働者である派遣労働者
派遣労働者であって、かつ短時間労働者又は有期雇用労働者である場合、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法の両者が適用となります。
派遣元事業者は、自社で雇用する派遣労働者のうち二重適用の対象者を確認し、自社の通常の労働者との間で、賃金以外の待遇や職務に密接関連する待遇については、パートタイム・有期雇用労働法にも対応しなければなりません。
